植物シュート形態を伴う分散太陽電池モジュールの受光形態

はじめに

SOFC(固体酸化物形燃料電池)とPEFC(固体高分子膜形燃料電池)の複合システムの導入により,環境負荷の小さなマイクログリッドを開発します。PEFCに比べてSOFCでは,高温の運転を要するものの発電効率が高いことが知られています。しかしながら,高温排熱の有効利用によって,総合発電効率のさらに高いシステムを構築することができると予想されます。そこで本研究では,札幌市の30住宅を伴うマイクログリッドに,改質ガスの時間シフトを伴うSOFC-PEFC複合システムを導入するときの運用を検討します。このシステムでは,ベースロードに対応させたSOFCの排熱を利用して改質ガスを製造します。この改質ガスを,次の日の変動負荷に対応するPEFCに時間シフトして供給します。本研究では,電力の負荷パターンの違いに対する,SOFC-PEFC複合システムの運用方法,発電効率,蓄熱量の関係を解析により調査しました。この結果,年間を通した提案システムの平均発電効率はおよそ43〜49%であることがわかりました。また,マイクログリッドの電力の負荷変動が大きくなると,燃料電池の負荷率および発電効率は低下することもわかりました。

研究の背景

SOFC(固体酸化物形燃料電池)の排熱の有効利用が検討されています。熱のカスケード利用(高温の熱から段階的に,各温度領域に適したエネルギーに変換して利用する方法)を考慮すると,高温排熱はできるだけ電気エネルギーに変換することが望まれます。そこでこれまでに多くのSOFC-GT(ガスタービン)複合システムに関して研究されてきました。しかしながらこれらのシステムでは,SOFCの排熱出力とGTの運転を同期する必要があります。したがって,このシステムをマイクログリッドの負荷に追従して運転する場合は,運転方法に制約を受けることから高い熱効率の維持することが難しくなります。そこで,SOFCをベースロード運転しGTを負荷追従運転に対応させる方法を検討します。ただしGTの部分負荷特性は悪いので,システム全体の発電効率を高く維持することは難しいと考えられます。一方,GTをベースロード運転してSOFCをマイクログリッドの負荷追従運転に対応させる場合も考えられます。このシステムでは,SOFCの排熱が安定しないため,GTの発電量は制限を受けます。さらに,SOFCの部分負荷の発電効率は,全負荷運転と比べて大きく低下します。そこで,SOFC-GT複合システムで高い発電効率を得るには蓄電装置を導入するか,システムの負荷をできるだけ一定に設定することが要求されます。したがって,GTとSOFCの複合システムをマイクログリッドの変動負荷に対応させる場合は,高い発電効率の維持は困難であると考えられます。本研究では,SOFCの排熱を使って,水素濃度の高い改質ガスを製造するシステムを検討しました。このシステムの特徴は,SOFCの排熱で製造した改質ガスを,時間シフトして利用できることにあります。この場合には,改質ガスを任意の時間にPEFCに供給することで,柔軟な運用を計画することができます。さらに,提案するSOFC-PEFC複合システムを札幌市の30住宅で構成するマイクログリッドに導入することを考えました。提案システムでは,SOFCをマイクログリッドのベースロード運転に対応させ,PEFCは変動負荷に追従するように運転します。この際のSOFCの排熱を利用して,天然ガスの水蒸気改質器を運転することで改質ガスを製造します。この改質ガスを貯蔵して,貯蔵量に基づいて次の日のシステムの運用を計画します。ただし本研究では,SOFCの発電量(ベースロード)は月毎の代表日で一定に設定し,PEFCに改質ガスを供給することでマイクログリッドの変動負荷に追従させます。この研究では,異なる負荷パターンにSOFC-PEFC複合システムを導入したときの各機器での燃料消費量,発電効率,蓄熱およびボイラの運用方法について調査しました。この結果から,提案システムをマイクログリッドに導入するときの,負荷特性と平均的な発電効率を明らかにしました。




  

システム

図5 (a)は,SOFCとPEFCの各運転方法のパターンを表します。SOFCを図5 (a)に示すベースロードに対応させて運転すると,図5 (b)に示す排熱を出力します。この排熱を利用して,天然ガスの水蒸気改質器を運転し,図5 (c)に示す改質ガスを製造します。さらに,この改質ガスを貯蔵して,次の日のPEFCの運転に利用します(図5 (d))。このときのSOFCとPEFCの各容量は,以下の手順で決めます。 a. 最初にSOFCとPEFCの容量をランダムに設定する。図5 (a)で示したベースロードの値は,SOFCの容量と同じとする。 b. SOFCの排熱量(図5 (b))を図4 (a)の関係から得る。 c. 図4 (b)で示した,改質器効率と改質ガスの出力の関係と,図5 (b)によるSOFCの排熱量から,改質ガスの製造量を計算する(図5(c))。 d. c.で述べた改質ガスを使って,次の日のPEFCの運用を計画する。PEFCは,図5 (a)の変動負荷に対応させて運転する。したがって,代表日の負荷パターンと次の日の負荷パターンを同じとすると,結局,図5 (a)の負荷(ベースロードと変動負荷)を満たすようにSOFCとPEFCの容量は設定される。 e. 次の日の運用計画から,システムの電力収支と改質ガスの収支を計算する。これらに誤差がある場合には,SOFCとPEFCの容量を変えて,b.の計算に戻る。 f. システムの電力収支および改質ガスの収支に関する誤差が0.1%以下になるまで,b.からe.の計算を繰り返す。誤差が0.1%以下になったときの,SOFCとPEFCの容量を最適値と決める。

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