ニューラルネットワーク気象予測を伴うソーラー改質システムの運用計画

概 要

太陽光を熱源とするバイオエタノール改質システム(FBSR)は,環境負荷の小さな燃料電池用燃料供給装置です。しかしながら,日射量や外気温度は不安定であり,運用を精度良く予測することが難しいことがわかっています。そこで,ニューラルネットワーク(NN)を用いて,短時間でFBSRの運用を予測するアルゴリズムを開発しました。過去1年間の気象パターン(全天日射量と外気温)と,エネルギー需要パターンをNNに入力し,さらに,遺伝的アルゴリズム(GA)を使って得たFBSRの運用パターンを教師データとしてNNに与えることで学習させます。任意の日のFBSRの運用方法は,学習済みのNNに気象パターンとエネルギー需要パターンを与えることでて予測されます。本研究稿では,FBSRの運用予測アルゴリズムを示し,さらに運用予測の解析精度の詳細について明らかにしました。

システム

図1は,Fuel cell system with bioethanol solar reforming system (FBSRと表す)の構成図です。FBSRでは太陽追尾機構を有する放物面回転鏡(以下,太陽光集光集熱器と称する)を2つ用います。太陽光集光集熱器Aおよび集光集熱器Bで集光した高密度の太陽エネルギーは,それぞれ,バイオエタノール燃料を蒸発させる気化部の熱源と,この燃料蒸気を水素リッチなガスに改質する改質部の熱源として利用します。ただし,夜間などの太陽エネルギーが利用できない場合は,タンクに圧縮貯蔵した改質ガスを燃料電池に供給して発電するか,商用電力を買電して賄います。


アルゴリズム

図2は本稿で開発したSRF運用予測アルゴリズムの使用手順です。運用予測アルゴリズムにはニューラルネットワーク(NN)を使いました。図2に示すようにNNの運用予測では,最初に学習計算を加える必要があります。本研究では,NNの学習計算用の教師データとして,予めGAで計算した代表日の動的運用計画の最適解を導入します。また,NNに与える入力データは,過去の気象パターン(2006年1月1日から12月31日の各時刻での全天日射量と外気温度)およびエネルギー需要パターン(電力・熱需要量の時間毎の各月平均値)を用いました。NNでの学習計算では,各ニューロンのネットワークの重みが決定されます。NNの学習計算が終わったなら,任意の日の気象パターンとエネルギー需要パターンをNNに与えることで,太陽光集光集熱器AおよびBの集光面積,改質ガスタンク容量,蓄熱槽の容量を得ることができます。

ニューラルネットワークの構成

本稿で導入する階層型ニューラルネットワークの構成を図3に示します。このニューラルネットワークは入力,中間,出力の3層で構成されます。NNの各層間のニューロンを全てネットワーク化し,各データは中間層の各ニューロン に伝えられます。各ニューロンでは入力の大きさにしたがって出力層 に結果を出力します。図4に各層のニューロン間の入出力を示します。


解析結果例

運用予測の解析精度
図5は,NNの学習過程で用いた電力需要パターンに,±5%,±10%,±20%の負荷変動をランダムに加えたときの解析誤差です。ただし解析誤差とは, FBSRの運用をGAで計算した場合との差です。

図6は,NNの学習過程で用いた気象パターン(外気温度及び全天日射量)に,±10%,±30%,±50%の変動をランダムに加えたときの解析誤差です。学習過程で用いた電力需要データに,±20%以下の負荷変動を伴う場合の入力データを導入して運用予測をすると,太陽光集光集熱器の集光面積で6%,改質ガスタンク容量で14%,蓄熱槽の容量で11%の解析誤差が生じます。一方,学習過程で用いた外気温度及び全天日射量のデータに,±50%以下の変動を伴う場合の入力データを導入して運用予測をすると,太陽光集光集熱器の集光面積で16%,改質ガスタンク容量で13%,蓄熱槽の容量で14%の解析誤差が生じます。本研究で開発したFBSRの運用予測プログラムでは,これらの精度内で解析が可能です。


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