サロマ湖河口における潮力発電の計画(サロマ湖グリーンマイクログリッド)

はじめに

面積152km2のサロマ湖は網走国定公園内にあり,日本で3番目に大きな湖である。また,サロマ湖は汽水湖としては日本最大で,豊富な自然環境に恵まれ,さらにオホーツク文化やアイヌ文化などの考古学上重要な地域でもある。ホタテ貝の漁獲高は日本一で,非常に貴重なホッカイシマエビ,牡蠣,カレイなども出荷されている。こうした背景から地域のエネルギー供給に,クリーンな自然エネルギーの導入が切望されてきたものの,湖周辺では渡り鳥が多くバードストライクの問題から風力発電の導入は難しく,また,景観を損なう恐れがあることから,大規模な太陽光発電の導入も多くの検討を要する。これらの理由から,サロマ湖周辺では自然エネルギーの導入が進んでおらず,商用電源による送電網を利用している。サロマ湖に代表される国内外の自然豊かな湖沼周辺では,景観を損なわずに利用可能な,自然エネルギーによる電力網の構築が課題である。しかしながら,貴重な自然環境を残す湖沼などで,独立した自然エネルギー電力網(グリーンマイクログリッド)を構築した例は見当たらない。

研究の目的

オホーツク海と面するサロマ湖には,およそ300m幅の西側河口(第1湖口)とおよそ50m幅の東側河口(第2湖口)がある。これらの河口では大きな潮流が見られ,この潮流の流速は,1~2m/sと非常に早いことが知られている。これらの河口の海中に,潮流により駆動する潮力発電システムを設置して,さらに,景観に影響を与えない周辺地域に設置されている自然エネルギー機器と連系させることで,グリーンマイクログリッドを構築する。(写真は,国土交通省網走開発建設部)


サロマ湖の位置


第1湖口

第2湖口

研究の特徴

日本国内では湖の河口部での潮流を用いた潮力発電の実施例はほとんどない。そこで本研究では,自然豊かな湖沼周辺に,地域の未利用エネルギー(湖口の潮力)と周辺の自然エネルギー機器との協調運転による,独立した自然エネルギー電力網(グリーンマイクログリッド)を計画する。また,グリーンマイクログリッドの計画と,環境負荷,電力品質,さらにコストパフォーマンスを明らかにすることで,クリーンなエネルギー供給システムを国内外の同様な地域に導入する際の,基本構想のベースとして利用可能になる点に,研究の意義がある。

期待される成果

湖口の潮力(未利用・自然エネルギー)及び周辺の自然エネルギー機器を系統連系した,グリーンマイクログリッドの構築により,自然環境をできるだけ損なうことなく,地産地消の電源を開発することができる。この技術は,貴重な自然環境の維持と,現地でのエネルギー需要を両立させる技術として,今後様々な形態を持つグリーンマイクログリッドとして発展するものと予想される。

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